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清少納言と雅楽
清少納言の『枕草子』には、雅楽に触れた部分がいくつもあります。
『枕草子』が書かれた平安時代中期は、雅楽がもっとも盛んな時期でした。
清少納言は独自の感性と観察眼で、当時の雅楽の様子を描き出します。
なかでも、清少納言が楽器の趣味について語った部分はよく知られています。
『笛は、横笛、いみじうをかし。遠うより聞ゆるが、やうやう近うなりゆくもをかし。近かりつるがはるかになりて、いとほのかに聞ゆるも、いとおかし。』
(笛は横笛がとてもよい。遠くから聞こえてくる音が少しずつ近づいてくるのも趣があるし、近くで聞いていた音が遠のいてかすかに聞こえるというのも、とても興がある)
『笙の笛は、月のあかきに、車などで聞きえたる、いとをかし。』
(笙は月の明るい夜に車の中などで聞くことができると、とても興がある)
どちらも自然の情景に合わせて楽器の音色を楽しむ、平安貴族の感性がうかがえる文です。
笛が近づき、また遠のいていく音色に耳をすませる感性は、現代を生きる私たちにとってもとても共感できます。