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雅楽の演奏をつかさどる「鞨鼓」
雅楽には指揮者が存在しません。
では、どのようにして演奏を成り立たせているのでしょう。
指揮者の代わりとして重要な役割をもつ楽器が「鞨鼓」です。
鞨鼓は、奈良時代に雅楽の1つとして中国から伝来した楽器です。
円筒型の胴を持つ枠付きの締太鼓で、2枚の鼓面は革紐で締めることにより張力を出しています。
打ち方は、桴で両方の鼓面を「掻く」ように打つのが特徴です。
高麗楽においては、鞨鼓は用いられず、代わりに「三ノ鼓」が同じ役割を担います。
雅楽合奏において、曲を始める合図は鞨鼓が出します。
実際の演奏は横笛から始まりますが、鞨鼓奏者がバチを手にすることで、合奏を始める合図となるのです。
舞楽の終わりも、鞨鼓がそれまでと違うリズムを提示することで、演奏が終結へと向かいます。
宮内庁楽部の演奏では、演奏を始める前と終わったあとの2回、鞨鼓奏者のみが礼をします。
このことからも、鞨鼓が演奏の鍵を握る中心的存在であることが分かりますね。
鞨鼓は、楽団の長や熟練の演奏者が受け持つようです。
ただ、鞨鼓は指揮者ほどの絶対的指揮権はなく、あくまで「全体の流れを司る上でもっとも重要な楽器」という捉え方が正しいといえます。
雅楽を鑑賞する機会があれば、鞨鼓に注目してみると、その役割の重要さに気付けるかと思います。